1音だけ分かる「これって絶対音感？相対音感？」

別項で大人でも絶対音感は身につける事が出来るのかについて解説しましたが、その延長の記事になります。

今回は「大人でも後天的に絶対音感がついた」或いは「絶対音感ぽいものが身についたけどこれはなに？」といった疑問について考察していきます。

1音だけ判別出来る能力は絶対音感？

絶対音感は後天的につく事はないと言われていますが、「トレーニングを行ったら判別できるようになった」という連絡をいただきました。

また、様々なミュージシャンにカウンセリングを行っているとどうやら局所的に音が認識出来る人というのは存外結構いるようです。

今回はその能力が絶対音感なのか、また後天的なトレーニングで絶対音感は身につける事が出来るのかを考察してみます。

Ｃの音だけなら判別できる場合

まず、後天的に１音だけ判別する事が出来る事を考察するにあたって成人してから絶対音感は身につける事が出来るのかについて。

「Ｃが鳴ったらすぐに分かる、或いはＣの音を鳴らすことが自分で出来る」

しかしＣ以外の音は分からない。この場合はどっちになるのでしょうか？

結論から言いますと、Ｃの音だけを記憶する事と絶対音感とは完全に別物です。

絶対音感とは脳に関連付けられた記憶で音が鳴った瞬間になんの音なのかを判別できる能力の事を指します。

色を判別している様なものであるべきで、色を見たときに色の名前を思い浮かべる前に色を認識出来る能力です。

ちゃんと練習すれば絶対音感は身につく？

そもそもの話として、大人になってから絶対音感を本気で身につけようとトレーニングをした人は何人ほどいるのでしょうか？

最初からあきらめているだけで、実は音感だけに集中したトレーニングをしっかり行えば身につくはずではないのかといった疑問についてですが、

バークリー・イーストン・ジュリアードでは絶対音感をもっていない生徒が絶対音感を身につけて卒業した例は０だそうです。

世界の頂点の音楽機関で実績がないという事実が絶対音感の会得のヒントになっている様な気がしますね。

また、トレーニングでどうにかなる事が立証されているのであればこういった有数の音楽教育機関では絶対音感習得トレーニングコースなどもあってもいいはずです。

300-400年ほどの歴史を持つ音楽教育機関でさえその結論にはたどりつかなかったという事は絶対音感は後天的に身につける事が出来ないと歴史的に認識されているのではないでしょうか。

結局１音だけ分かるのは絶対音感なの？

結論から言いますと１音のみ判別できるのは絶対音感とは言えません。１音のみなら分かる人のほとんどが高い確率で感覚的に見当をつけられる程度で、

本来の絶対音感とは赤を見て赤だと直感的に答えているのと同じような能力なのです。つまり、色を判別するのと同じような感覚で音を聴いたものを直感的に言語化する能力になります。

つまり絶対音感は記憶力が非常に強い方であればそれに近いものを会得する事が出来ますが、直感的に分かる人とは全く別の話です。

一方で絶対音感を幼児期に会得した人はＩＱや記憶力が人と違うという面白い研究もあるようです。