倍音とは
倍音(overtone)
楽器をたくさん並べて全て同じ音を奏でても全く違く聴こえるのはどうしてか考えた事はありますでしょうか。これには倍音と呼ばれる音の発生が密接に関係しています。まずどこにでもあるピアノでC(ド)の単音を鳴らすとします。単音ですので鳴っているのは1つの音だけだと定義付けられますが、実際にはC以外の音も僅かに付随します。これが倍音です。
一つの音を鳴らしても実際は他の音も鳴っている
例えばレギュラーチューニングで5弦のA(以下Aと呼びます)を鳴らしたとします。Aは1秒間に110回振動し音を発します。これは110Hzと呼ばれAの音そのものです。この時の振動は110hz以外にも多数発生します。1秒間に110回振動する意外にも同時に別の振動も発生しています。
生楽器は倍音が発生する
指やピックでど真ん中を毎回まっすぐ弾く事が出来れば完璧な弧を描くので純粋な110Hzのみを鳴らす事が出来るでしょう。ただし力加減が完璧かつ完璧な位置かつブリッジとの接点などの外的要因もない場合に限定されるので実際には不可能だと言えます。
倍音で鳴る音
Cの単音を鳴らした時には別の音も一緒に付随していると前述しましたが、ではどういう音が実際に鳴っているのでしょうか
今回はC(ド)の音を元に解説
鳴らす音Cは〈fundamental〉(以下基音)と呼びます。下の図を見て下さい。弦の振動幅の行動を視覚化しています。基音は一番上の図になります。基音から順番にひとつ目、ふたつ目、、、と順番に振動を表しています。
倍音 | 振動数(Hz) |
ひとつ目の倍音(基音) | 110Hz |
ふたつ目の倍音 | 220Hz |
みっつ目の倍音 | 330Hz |
よっつ目の倍音 | 440Hz |
いつつ目の倍音 | 550Hz |
むっつ目の倍音 | 660Hz |
ななつ目の倍音 | 770Hz |
弦は基音の揺れの他に半分の幅で揺れたり1/3で揺れたりします。理論上この倍音として振動が分割されていく工程は無限に継続します。
全ての倍音は基音に対する倍数になります。
倍音と音色
倍音は複雑で小さく認識しづらい
倍音は大きければ十分に可聴ではありますが、生楽器のそれは音の高さに直接的な影響はほとんど与えず、基音が高さを決めます。また、倍音はバラバラの音としてというよりは音色やその音質を形成しているものとして認識されます。
倍音がまったくない音:サイン波
楽器によってこの倍音のバランスや出方が大きく違います。倍音が全くない音はサイン派でレーダー通信の様な音がします。テレビの深夜にNHKなどで流れるテスト音声の「ピー」という音がそれです。
ビンテージやエイジドの倍音
また、同じ楽器でも鳴り方が全く違うのは楽器の形状や材質が倍音を形成するのに与える影響に他なりません。エイジド加工されたギター等が良く鳴るようになった話などはその典型です。ビンテージ楽器が魅力的なのはその外見や歴史もありますが、弾きこまれて倍音が豊かになるとされている側面も持っています。
ディストーションと倍音
歪み過ぎた単音は和音と同等
ものすごい歪んだ音は音の高さが分からなくなる現象は聡明な読者様でしたら既にご存じだと思いますが、この現象はディストーションの原理に直結しています。
基音と倍音が同じ大きさ
ディストーションとはつまり「これ以上音が出力されません」というリミッターをした状態で入力値だけをあげていった結果倍音成分が基音と比較的したときに大きくなる為です。音色として認識されていた倍音が和音として認識出来る程にはっきりとすると、耳の良い人だとコードとして認識してしまう事もあるようです。